犬や猫の「避妊・去勢手術」は広く行われていますが、うさぎも手術することが可能です。
避妊・去勢手術には、問題行動がなくなったり病気の予防に繋がったりするなどのメリットがあります。
しかし、全身麻酔を使った手術ということもあり、体と心に負担がかかるというデメリットも存在します。
「避妊・去勢手術とはどんなものなのか?」「どんなメリットやデメリットがあるのか?」そんな疑問を解決できる内容をお伝えします!
目次
うさぎの避妊・去勢手術とは?
避妊・去勢手術とは、うさぎの生殖器に行う手術のことです。
全身麻酔をかけて、オスの場合は陰嚢を、メスの場合は「精巣」「卵巣や子宮」といった生殖器を体内から取り出します。
出典:大野瑞絵『よくわかるウサギの健康と病気』誠文堂新光社、2018年、p.15
病気の予防や問題行動の解決、望まない繁殖の防止といったメリットがある反面、手術によってうさぎの体と心に負担がかかるというデメリットもあります。
避妊・去勢手術の成功率はどのくらい?
近年、うさぎの避妊・去勢手術をしてくれる豊富な実績をもつ動物病院や獣医師が増えてきています。
また、安全で適切な麻酔管理も施されるようになったため、過度な心配ないりません。
ただ、やはり手術なので絶対に大丈夫ということはありません。
まれですが、生まれつきの体質で麻酔が体に合わず、手術によって死んでしまうこともあります。
うさぎが手術に耐えられる体力があるか、また健康状態などをしっかり検査して獣医師の判断を仰ぎましょう。
避妊・去勢手術を行うメリット
うさぎに避妊・去勢手術を行うことには、さまざまなメリットがあります。
以下にメスとオスに分けてそのメリットをご紹介いたします。
- 望まない妊娠を避けることができる
- 生殖器(子宮や乳腺など)にできる病気を防ぐことができる
- 噛んだり威嚇したりといった攻撃行動が減りやすい
- 偽妊娠(本当はしていないのにまるで妊娠したかのような状態)が起こらなくなる
- ほかのうさぎとケンカをしにくくなる
- なわばり意識(尿をかけるなどのマーキング)が軽減される
- トイレのしつけがしやすくなる
- 精巣の炎症や腫瘍といった生殖器系の病気を防ぐことができる
- 尿のスプレーなどの問題行動が減りやすい
- 攻撃行動が減りやすい
- 長生きしやすい
- トイレのしつけがしやすくなる
- やさしい性格になりやすい
- 人への交尾行動が減りやすい
- ほかのうさぎとケンカをしにくくなる
避妊・去勢手術を行うデメリット
避妊・去勢手術を行うことにはデメリットもあります。
うさぎの安全のためにも、デメリットをしっかりと考慮した上で手術を行うのか決める必要があります。
以下にデメリットをまとめました。
- 全身麻酔を使った手術のため、ある程度の危険を伴う
- 手術後は体の代謝が低下するため、太りやすくなることがある
- 攻撃行動や問題行動(尿スプレーなど)が必ずなくなるとは限らない
- 術後、食欲がなくなったり元気がなくなったりすることがある
避妊・去勢手術は何歳までに受ければいいの?
一般的に性成熟を過ぎたら手術が可能といわれています。
メスは生後6~8か月くらいで、オスは1歳までに手術をすることが理想です。
また、手術を受けるにあたって、いくつかの注意点を以下にまとめました。
- 体調が優れない、体力的に厳しいなどの事情があると手術が受けられない
- メスの手術の場合、お腹を開くためオスの場合よりも負担が大きい
- オスは術後6週間ほどは繁殖能力がある
(体内に精子が残っていることがあり、術後しばらくはメスと一緒にすると妊娠させる可能性がある)
尿スプレーなどの問題行動も、早めに手術を受けていた子の方が改善しやすい傾向にあります。
手術を受けるのが遅くなると問題行動が習慣化してしまい、手術をしても改善されにくくなってしまいます。
そこで問題が見つかったり、体力的に手術を受けることが難しいと判断された場合、避妊・去勢手術は中止になることもあります。
手術の流れをカンタン解説
避妊・去勢手術の基本的な流れを紹介します。
1.手術についての説明
獣医師から手術について説明があります。
メリットやデメリット、注意点など疑問に思う点は積極的に質問をして理解しておきましょう。
2.術前検査
うさぎの体が手術や麻酔に耐えられるかどうか検査をします。
何も問題がなければ手術の日程を決め、準備をしていきます。
検査は身体検査や血液検査などが行われます。
3.手術
オスの手術の場合は陰嚢を切り、中の「精巣」を取り出します。
メスほど負担がない手術なので、手術当日に帰宅できる場合が多くなっています。
メスの手術ではお腹を切り、「卵巣のみ」または「卵巣と子宮の両方」を取り出します。
体に傷をつける負担が大きい手術なので、1〜3日ほどの入院が必要になります。
4.術後
術後は、麻酔からしっかり目を覚ますか、どこにも異常はないかを獣医師や看護師が確認します。
そして退院するまで診察をしたり薬を飲ませたりします。
5.帰宅
問題がなければ抜糸の日程を決め、そのまま退院します。
帰宅後はゆっくり休ませてあげましょう。
慣れない装着により嫌がったり落ち込んだりすることもあるので、臨機応変に対応してあげる必要があります。
病院からレンタルしたエリザベスカラーを嫌がった場合、うさぎ専用で負担が少ないものを購入してあげるのも1つの方法です。
まとめ
うさぎの避妊・去勢手術には、病気の予防や問題行動の減少などさまざまなメリットがあります。
避妊・去勢手術を受けることで、うさぎと人間が共存しやすくなるとも言えます。
しかし、全身麻酔を行う手術は、人間と同様にうさぎにとっても負担の大きいものなのです。
それを理解してあげたうえで、避妊・去勢手術に臨みましょう。
<この記事の参考文献>
大野瑞絵『よくわかるウサギの健康と病気』誠文堂新光社、2018年。